今日は、僕が実際に使っている「音ノリを意識した作詞テクニック」と「詩的な表現を生み出す方法」を紹介していこうと思います。
作曲メインでやってると、作詞って音楽的な作業じゃなくて面倒に感じませんか?けど、違うんです。作詞を研究していくうちに、歌詞って曲のリズムやメロディの印象に大きく関わる非常に重要な要素だと気づいたんです。
作詞につまずいている方の参考になれば幸いです。
🎵 音ノリを考える編
無声音でリズムを作る
無声音って何かというと、「か」「さ」「た」「は」「ぱ」行の音。これらの音は息が抜けるような音なので、リズムのアクセントになるんですよ!
例えば:
- 「タララスタラッタ」→「ス」の部分で自然な休符が生まれる
- 「あいしてるよ」→「し」でリズムが締まる
- 「かぜがふいてきた」→ 無声音でリズミカルに
実例を挙げると、スピッツの「チェリー」のサビの出だし。
3音のメロディーに「愛してる」という5文字が詰め込まれています。
その中でも「愛してる」の「し」は、本来メロディーにない音なんですよね。
3音にそのまま「きーみーが〜」といったように3文字を当てはめると、どこか単調でのっぺりとした印象のメロディーに聞こえますが、「し」という無声音が間に入ることで、見事に軽やかで爽やかな印象に変わっています。
一音一文字を避ける
「一音=一文字」で歌詞を作ってしまうと、単調でリズム感のない歌になります。日本語ってこうなりがちなんですよね。
でも実は、日本語を分解して英語の「音節」のような考え方をすることで、一気に軽やかな印象に変わります。
例えば:
- 「狂っちゃうくらい」→ 3音で歌える(くるっ/ちゃう/くらい)
- 「プラマイゼロ」→ 3音で歌える(ぷら/まい/ぜろ)
- 「クリスマス」→ 2音で発音可能(くりす/ます)
- 「スライム」→ 2音で収まる(すらい/む)
こうやって音をまとめることで、印象を軽やかにするだけでなく、限られた音数の中により多くの情報を込められるようになります。
音象徴を意識する
これ、めちゃくちゃ効果的なテクニックです。
「ブーバ/キキ効果」って聞いたことありますか?
次の画像を見てください。

この画像のうちどちらかが「ブーバ」でどちらかが「キキ」です。
どちらが「ブーバ」でどちらが「キキ」でしょうか?
この質問、ほぼ全ての人が丸い方を「ブーバ」、トゲトゲの方を「キキ」だと答えるそうです。
つまり、音には形や質感などの印象があるということです。これを「音象徴」と言います。
これを作詞に応用すると:
- 優しい印象を与えたい→「マ行」「ナ行」を多用(まどろむ、なごむ、など)
- 力強い印象を与えたい→「カ行」「タ行」を多用(かける、たたかう、など)
- 子供らしく可愛い印象を与えたい→「ちゃ」「ちゅ」「ちょ」などを多用
母音も重要です。ア段は口の形通り、スケール感の広い印象ですが、イ段やウ段はやや縮こまった印象になります。
これらを意識することで、音の印象って結構大きく変わると思います。
韻を踏む
日本語でもラップやヒップホップだけじゃなく、J-POPでも韻を踏むことで気持ちいいリズム感が生まれるんです。
韻には大きく分けて2種類あります:
脚韻(きゃくいん)
文末で音を揃える韻の踏み方です。
Official髭男dismの「Pretender」では:
「君とのラブストーリー/それは予想通り」
→「ストーリー」「通り」で韻を踏むことで印象的なリズムが作り出されています。
頭韻(とういん)
文頭で音を揃える韻の踏み方です。
例:
- 「かぜがかおるかわのほとり」
- 「さくらさくさかみち」
頭韻は日本の古典文学でもよく使われていて、リズム感だけでなく言葉の美しさも演出できます。
韻を踏むときのコツ:
- 完全に同じ音じゃなくても、似た音(「い」と「え」など)でも効果的
- 毎行で韻を踏むと逆にくどくなるので、要所要所で使う
- 意味を犠牲にしてまで韻を踏もうとしない
ポイントで韻を踏んだフレーズを入れると、聴いていて「なんか気持ちいい」という感覚を生み出せると思います。
小技:母音の融合
ちょっとした小技ですが、「ウ段+母音」の組み合わせは1音にまとめられます。
英語だと「ノックアウト」は「ノッカウト」って発音されていませんか?同様に「ロールアウト」は「ローラウト」と発音されているように聞こえます。
このような考え方は、実は日本語でも応用可能なんです:
- 「海賊王」→「かいぞこう」でも伝わる
- 「来る明日」→「くらした」でも伝わる(※『暮らした』と誤解されないよう前後の文脈の工夫も重要)
「音数が一文字足りない!」といったような時に、結構使えるテクニックです。
✍️ 詩的な表現を生み出す編
「僕」と「君」をなるべく使わない
J-POPの歌詞でよく使われる「僕」「君」「あなた」。これらをなるべく使わずに表現できたら、もっと印象的な歌詞になるんです。
例えば、「僕と君」を表現を「二つのコーヒーカップ」とかに変えてみることで、グッと情景の浮かぶ印象的な歌詞になりますよね。
そして、「二人はカフェで談笑することが多いのかな?もしくは結婚していて一つ屋根の下で暮らしているのかな?」といったような、関係性の想像を膨らませることができます。
主観の形容詞を封印する
「嬉しい」「悲しい」「寂しい」「可愛い」「暑い」…こういう直接的な表現、使いたくなりますよね。でも、これらを使わずに感情を表現できたら、もっと深い歌詞になります。
例えば「悲しい」を使わずに悲しみを表現:
- 「雨音だけが部屋に響いてる」
- 「笑い方を忘れてしまった」
- 「鏡に映るしかめ面」
「可愛い」を使わずに可愛らしさを表現:
- 「ポニーテールに赤い髪飾り」
- 「てちてちと音が聞こえそうな走り方」
「暑い」を使わずに暑さを表現:
- 「1分で溶けた氷」
- 「じわりと滲み出す汗」
- 「ジリジリ焼けつく肌」
情景や行動で感情を表現すると、聴き手の想像力を刺激できると思います。
比喩を使う
比喩には直喩と隠喩の二種類と番外編として擬人法があります。
直喩(ちょくゆ)
「まるで〜」「〜のような」を使って例える比喩です。
比喩なし:「笑顔」
比喩あり:「まるで幼児のような笑顔」
比喩ありの方は無垢であどけない感じの笑顔であることが伝わると思います。
これが「まるで絵に描いた悪人のような笑顔」であればニタァと笑っている悪い顔をイメージすると思います。
このように直喩を使用することで、より具体的に物事を表現できるのでリスナーがイメージしやすくなります。
「人がゴミのようだ!」も直喩です
隠喩(いんゆ)
「まるで〜」を使わず、例えていることを明らかにしない比喩です。
比喩なし:君に会うと気持ちが癒される
比喩あり:君はいつも僕の薬箱さ(らいおんハート-SMAP)
直喩よりもさらにテクニカルで詩的な印象になる気がします。
例:
- 「君は太陽」(君を太陽に例えている)
- 「恋は戦争」(恋愛を戦争に例えている)
- 「時は金なり」(時間をお金に例えている)
擬人法(ぎじんほう)
物を人に例える表現方法です。
比喩なし:強い風が吹いている
比喩あり:風が怒っている
自然現象、生き物、乗り物などの状況を人の動作で例えることで情景をより具体的に表現できます。
例:
- 「空が泣いている」(雨が降っている)
- 「街が眠る頃」(夜が深まった頃)
- 「花が微笑む」(花が美しく咲いている)
「しとしとと降る雨」もいいですが、「空が静かに泣いている」の方が詩的な感じがしません?
比喩を使う際の注意点
- 使い古された比喩は避ける(「雪のような肌」「宝石のような瞳」など)
- 比喩の元ネタが分かりにくすぎないように注意
- あまりに多用すると逆に伝わりにくくなる
これらのように比喩を使うことで、同じ感情でも、その強さや質感を細かく表現できるようになります。
まとめ
作詞って、誰でもできるのですが、その分、奥が深くて難しいですよね…
今日紹介したテクニックは、いきなり全てを使おうとするのではなく、1つ使うだけでも充分ステップアップできると思うので、ぜひ使ってみてください。
全部意識して書こうとすると雁字搦めになって筆が全然進まなくなっちゃいますからね。
実際、僕も常にこれらを意識できているわけではなく、「ここ、なんか単調だな〜」と思った時に一音に複数の文字を詰め込んでみるとか、「ここ、なんかイメージしづらいな〜」と思った時に比喩を使ってみるとか、その程度の使い方です。
常にこれらのテクニックをフル活用するのではなく、AメロBメロはあえて一音=一文字で単調な歌にしておいて、サビはところどころリズミカルな乗せ方をしてメリハリをつける、みたいなこともできると思います。
皆さんが意識されていることも教えていただけると嬉しいです。
質問なども含めて、コメント欄でお気軽にどうぞ!
※このブログで紹介したテクニックは、あくまで一例です。作詞に正解はないので、自分なりのスタイルを見つけていってくださいね!

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